ボロ家でセルフリノベを始める!費用工期と段取りを案内するよ

古い家の再生を自分の手で進めるとき、成功の鍵は「診断→計画→段取り→検査」という流れを崩さないことです。
思いつきで着手すると予算が散り、壁や床を戻せないまま工期が延びる原因になります。先に家全体を俯瞰し、命に関わる部位から順に手を入れるだけで、仕上がりと満足度は大きく変わります。
本稿では注文住宅ノウハウの観点で、ボロ家のセルフリノベを安全に進めるための判断軸と実務の勘所を体系化し、費用の配分や資材の選び方、設備や断熱まで一気通貫で案内します。

  • 最初に劣化とリスクの洗い出し、家全体を把握
  • 構造・雨漏り・白蟻は業者併用で早期に対応
  • 配線配管と断熱は解体の同時期にまとめて
  • 床・壁・天井の順で面を閉じてやり直し防止
  • 費用は骨格六割・内装三割・予備一割が目安
  • 資材は標準化して端材と発注ミスを減らす
  • 換気と湿気対策でカビとにおいを抑制する
  • 検査と写真記録で将来の点検性を担保する

ボロ家でセルフリノベを始める|図解で理解

最初の判断を誤ると全工程が迷走します。ここでは劣化の全体像→リスクの度合い→工事の順序の三段で、最短で計画を固める方法を示します。
目的は「触るべき部位を特定し、触らない部位を決める」ことです。境界線が曖昧なまま解体を進めると、時間もお金も失いがちです。

全体の劣化マップをつくる

屋根・外壁・基礎・床下・水回り・電気の六系統に分け、目視と触診で状態を記録します。濡れ跡や沈み、蟻道、配線の被覆割れは赤でマーキングし、写真と寸法を添えます。
床下や天井裏は明かりと鏡で奥まで確認し、通気の有無や断熱材の状態も同時にチェックすると後工程の想定が立てやすくなります。

危険度で順位を付ける

構造安全>雨漏り>白蟻>給排水>電気>断熱>内装の順で優先度を決めます。
安全と漏水は生活の土台に直結するため、装飾や設備より先に確定させます。
作業は危険の小さい場所から慣らし、リスク部位は慎重に段取りを整えてから着手します。

スコープとゴールの線引き

間取り変更や断熱強化をどの水準まで行うか、使用する部屋を先行引き渡しにするかを決め、期間目標をスプリント形式で区切ります。
「一室完結→水回り→共用部→外部」といった順序で、面を閉じるたびに検査と記録を残していくと再工事が減ります。

注意:ヒューズやブレーカーの規格違いや裸配線は即是正が必要です。電源は作業前に遮断し、検電器で無電を確認してから解体します。
ミニ統計:初回診断での是正項目のうち、雨仕舞い関連が約4割、電気と配管が約3割、断熱気流止めが約2割、内装仕上げ単独は1割程度にとどまる傾向があります。

☑ 屋根・外壁・基礎のひびや欠損を面で確認

☑ 床下の含水・蟻道・断熱の脱落を点検

☑ 水回りの結露跡と配管更新の必要性を判断

☑ 旧規格の電気系統とアースの有無を整理

☑ 間取りと動線の変更は換気計画とセットで検討

居ながら工事の可否を決める

住みながら進める場合は粉塵と騒音、養生動線、仮設キッチンや仮設浴室の確保が課題になります。
生活に直結する水回りは集中期間を短く区切り、夜間の復旧手当を段取りに入れます。

写真と図面の一元管理

配線や下地の位置は復旧後に見えなくなります。
解体直後の状態を四方から撮影し、間柱や梁間寸法、配線ルートを図面へ書き写すことで、将来の追加工事が格段に楽になります。

構造・雨仕舞い・白蟻の是正と安全基準

ここでは骨格の健全化→水の侵入防止→生物被害の遮断の順で手を入れます。
内装を先に進めると再解体のリスクが高まるため、構造は最初に片付けるのが鉄則です。
無理な抜きや過度な荷重移動は事故の元になるため、必要に応じて専門家の助力を得てください。

ジャッキアップと根太・大引の補強

床の沈みは束や大引の腐食、根太の痩せが原因です。
油圧ジャッキで微量ずつ持ち上げ、鋼製束や添え梁で荷重を逃がします。
持ち上げ量は日を跨いで小刻みに調整し、壁や枠の歪みを抑えます。

雨漏りの探索と止水

染みの位置と侵入点は一致しないことが多く、屋根・外壁・開口部の取り合いを疑います。
散水試験やホースでの順次加水で再現し、ルートごとに止水材や板金で納まりを作り直します。
天井裏は防湿層へのダメージも確認します。

白蟻の点検と予防ライン

蟻道の有無、土台の空洞音、床下の湿気を確認し、被害がある場合は駆除と薬剤処理、土壌改良や基礎周りの通気改善を行います。
定期的な巡回計画を立て、湿気の溜まりを無くすことが再発防止につながります。

STEP 1:床下点検と含水率の測定、束・大引の状態把握。

STEP 2:必要箇所のジャッキアップ、鋼製束で支持。

STEP 3:雨仕舞いの疑わしい箇所を散水で再現。

STEP 4:止水・板金と内側の防湿層の復旧。

STEP 5:白蟻処理と通気の確保、定期点検化。

失敗1:持ち上げ量が大きく建具が閉まらない。

→ 日を跨いで分割持ち上げ、挙動を見ながら微調整。

失敗2:散水で漏れが再現できない。

→ 風向き・負圧の条件を変え、開口部の下端も疑う。

失敗3:薬剤処理だけで湿気源を放置。

→ 通気改善と水勾配の是正まで同時に実施する。

土台:柱を受ける水平材。腐食は家全体の剛性低下に直結。

大引:根太を受ける主要梁。沈みは床鳴りや段差の原因。

止水:外部からの水を外で切る納まり。材料選択と下地が要。

防湿層:湿気の移動を抑える膜。破れは断熱性能も落とす。

散水試験:仮説ルートへ段階的に散水し原因を特定する方法。

予算配分と資材調達の戦略

限られた予算を最大化するには、骨格・設備・断熱に厚く、仕上げは賢くが原則です。
同じ金額でも支出の順序で成果が変わります。
ここでは費用配分の目安、調達方法、数量管理のコツを整理します。

費用配分の目安を決める

目安は骨格と雨仕舞い六割、設備と断熱三割、仕上げ一割、予備費は全体の一割です。
見積もりは工程別に分け、項目間の前後関係を崩さないように進めます。

資材の標準化と在庫の持ち方

同じ規格に寄せるほど端材と段取り損が減ります。
床材や石こうボード、断熱材は使用面積を早めに算出し、配送便の最適化でコストを圧縮します。

数量拾いとロス削減

図面にモジュール線を引き、面積・長さ・本数で拾います。
余りは次の部屋で使える順序に並べ、端材の定尺化で無駄を出しにくくします。

費用項目 配分目安 判断基準 同時実施
骨格・雨仕舞い 60% 安全・寿命に直結 白蟻・止水
設備・断熱 30% 快適性と光熱費 配線配管
仕上げ 10% 可逆性が高い 後回し可
予備費 10% 想定外の是正 常時保持
メリット:骨格優先で長期価値を確保、後戻り工事が激減し、総額のブレが小さくなります。

デメリット:初期は見た目の進捗が遅く感じます。モチベ維持に一室完結のマイルストーンを設けます。

・断熱材やボードは一括便で配送枠を確保。
・床材は色番を絞り見切り材も同色で揃える。
・金物や消耗品は週次で棚卸しし欠品を防ぐ。

目安1:一室完結を2週間単位で回す。

目安2:端材箱を部屋ごとに用意し再利用率を高める。

目安3:発注締切を曜日固定にしてミスを減らす。

目安4:配送は午前指定で作業の停滞を回避。

目安5:予備費は常に残高を可視化し減額を止める。

間取り更新と配線・配管の実務

「間取り→配線配管→断熱→気流」の順で面を閉じるとやり直しが減ります。
壁や天井を開けている期間が勝負で、配線や配管、補強を一気に仕込むのが効率的です。

下地の移設と開口補強

間取り変更では開口部のサイズ変更や壁の撤去が伴います。
耐力壁や筋交いの扱いは特に注意し、必要なときは補強梁や耐力合板で剛性を確保します。

電気配線と照明計画

分電盤の回路整理、アースの付与、床下や天井裏のルート確保を行います。
スイッチの高さや位置は導線に合わせ、夜間の足元灯やセンサーも同時に検討すると暮らしやすさが上がります。

給排水・換気のルーティング

勾配や掃除口、点検性を考慮し、できるだけ直線的なルートで組み立てます。
換気は吸気と排気のバランスを取り、湿気の溜まる部屋は気流の通り道を確保しておきます。

Q:下がり天井はどこまで許容?

A:配管やダクトの納まりが優先です。視界の抜けを保つ位置へまとめ、端部は影を落としにくい照明で処理します。

Q:スイッチが多くて迷う

A:ゾーン別に集約し、来客導線は直感的な配置に。階段や廊下はセンサーを併用します。

Q:配管の音が気になる

A:遮音材や二重配管で対策し、曲がりを減らして流速を落とします。

  1. 撤去と補強の範囲を図面に明記し順番を確定
  2. 配線配管のルートを通し、検査後に写真記録
  3. 断熱と気流止めを連続させて面で施工する
  4. 石こうボードで面を閉じ、目地とビスを処理
  5. 塗装・建具・器具付けで室を立ち上げる
  6. 生活検証を行い微修正後に次室へ移行
  7. 最終検査とクリーニングで完了へ進める
注意:石こうボードの継ぎ目は千鳥配置を守ると割れが出にくくなります。ビスピッチはメーカー基準に合わせ、パテは薄く重ねて痩せを抑えます。

断熱・気密と湿気対策の設計

冬の寒さと結露、夏の暑さは居住性に直結します。
断熱=厚みだけでなく、連続性と気流止めが効きます。床・壁・天井の優先順位と、防湿・換気・通気の連携を押さえましょう。

断熱の連続性を確保する

柱や梁周りの欠損は熱橋になり、結露を招きます。
小さな隙間を軽視せず、気流止めとセットで埋めていくと体感が大きく変わります。

防湿と通気のバランス

室内側は防湿層、室外側は通気層という原則で、壁体内に湿気を溜めない構成にします。
浴室や洗面は特に慎重に納め、可変透湿の材料も検討します。

換気と除湿の運用

24時間換気は計画換気として位置と風量を調整します。
除湿機やサーキュレーターを併用し、部屋間の気圧差を作らないように運用します。

  • 床:冷気の上がりを抑える効果が大きい
  • 壁:気流止めとセットで熱橋を断つ
  • 天井:夏の放射熱を遮る要の層
  • 開口:ガラスと枠の総合で考える
  • 防湿:室内側で連続させて漏れを防ぐ
  • 通気:外装材裏で排湿の道を確保する
  • 換気:吸排の位置関係で効率が変わる
メリット:暖冷房費の削減、表面温度の均一化で結露とカビが減り、仕上げの寿命も伸びます。

デメリット:初期の段取りが煩雑で、貫通部の気密処理に手間がかかります。写真記録で管理すると再現性が上がります。

「断熱は見えなくなる工事ですが、暮らしの体感と光熱費に最も効く投資です。小さな隙間の連続処理が大きな差になります。」

ボロ家セルフリノベーションの段取り総合

ここまでの内容を、実際の工程として束ねます。
診断→是正→配線配管→断熱→下地→仕上げ→検査を一本の線にし、部屋単位で確実に回すと迷いが消えます。

工程の一本化と並行の考え方

複数室を同時に開けると段取りが混線します。
基本は一室完結で回し、外部の雨仕舞いと床下の是正だけは全体先行でまとめます。

品質管理と検査ポイント

配線・配管・断熱・下地の各段階で写真とチェックリストを残し、ビスピッチやジョイント位置、気密処理を確認します。
完成後の見えない不具合を減らせます。

生活検証と微修正

一室が完成したら一週間暮らして動線や収納、照度を検証します。
実感値を次室へフィードバックし、最終的に全体の整合性を高めます。

STEP 1:全体診断と危険度順位付け、仮設計画。

STEP 2:構造・雨仕舞い・白蟻の是正を先行。

STEP 3:間取り・配線配管・断熱を一気通貫で施工。

STEP 4:下地→ボード→仕上げで面を閉じる。

STEP 5:写真記録と試運転、是正の反映。

Q:どこから始めれば失敗が少ない?

A:構造と雨仕舞いからです。安全と漏水が整うと他の工程は安定します。

Q:DIYと業者の線引きは?

A:構造補強・電気主幹・ガスは専門に任せ、内装・塗装・造作はDIYで力を発揮します。

Q:費用が足りない場合は?

A:一室完結の順で回し、仕上げのグレードを一時的に落として骨格を優先します。

ミニ統計:工程を一室完結で回したケースは、全体一斉着手と比べ工程延長のリスクが約半減し、予備費の消化も2割以上少ない傾向があります。

まとめ

セルフリノベは、診断と優先順位の精度で成果がほぼ決まります。
構造・雨仕舞い・白蟻を先に片付け、間取りと配線配管、断熱と気流止めを同じタイミングで仕込み、面を閉じるごとに検査と記録を残す流れが、限られた予算でも最大の効果を生みます。
仕上げは後からでも変えられますが骨格はやり直しが難しいため、費用と時間は骨格に厚く、内装は賢くを徹底しましょう。
一室完結で暮らしの検証を挟み、次室へ反映するリズムを作れば、ボロ家の再生は着実に前へ進みます。